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不動産投資
2025.12,23

不動産で相続税対策ができる?具体的な方法とメリット・デメリットを徹底解説

相続税対策というと「生前贈与」「生命保険」「家族信託」などが一般的に思い浮かびますが、実は不動産も王道の選択肢です。その理由はシンプルで、相続税は「いくらで購入した」ではなく、相続税法上のルールに基づいて算出された評価額をもとに課税されるからです。

不動産は、評価の仕組み上、現金や金融資産に比べて相続税評価額が低くなりやすい資産です。さらに賃貸の有無や土地の利用状況によっては評価が一段と下げられる余地もあります。
ただし、不動産は「節税になるなら買えばよい」というほど単純ではありません。空室リスクや修繕費、金利上昇、売却しにくさといった課題も伴います。そのため、節税効果だけでなく、資産性や運用負担とのバランスを見極めることが重要です。
本記事では、不動産が相続税対策として有効とされる理由をはじめ、具体的な活用方法、メリット・デメリット、そしてよくある成功例・失敗例までを整理して解説いたします。なお、制度の内容や適用条件には個別性が高いため、最終的な判断については必ず税理士などの専門家にご確認ください。

不動産が相続税対策に効果的な理由とは?

 

ここでは「なぜ不動産が相続税対策としてよく使われるのか」について、評価の仕組みと特例の考え方から整理していきます。節税の根拠を理解しておくことで、無理な投資判断を避けやすくなります。

 

不動産の相続税評価額が低くなりやすい理由

相続税評価において、建物は原則「固定資産税評価額」、土地は「路線価」等を基準に算定されます。これらはいずれも一般に実勢価格(実際の販売価格)より低く算出されやすく、同じ資産価値であっても、現金に比べて課税対象額が小さくなるケースがあります。つまり、現金を不動産に置き換えるだけでも「評価額の圧縮が起こり得る」というのが基本構造なのです。ただし、行き過ぎた節税策と判断された場合、税務当局から否認されるリスクもあるため注意が必要です。

 

特例制度を活用した節税の仕組み

代表的な特例制度として「小規模宅地等の特例」があります。居住用や事業用など一定の要件を満たす土地について、相続税評価額が大きく減額される仕組み(区分ごとに減額割合や面積上限が異なります)です。適用できれば節税効果は非常に大きい一方で、同居の有無や、持ち家の有無・事業継続要件など細かな条件が定められています。

 

現金やその他資産との違い

現金・預金は原則そのままの金額が相続税評価額となります。上場株式も相場に連動し、評価の変動はあるものの評価が大きく下がる仕組みが常にあるわけではありません。一方で、不動産は評価方法が相続税法上あらかじめ定められているため、同じ1億円の資産でも現金の1億円と不動産の1億円では課税ベースが変わり得るという特徴があります。

 

不動産特有の節税効果の活かし方

不動産の相続税評価は、単に「購入する」だけで決まるものではなく、「どのように使うか(自宅・賃貸・事業用)」によっても大きく変わります。賃貸化による評価減、特例が適用できる土地の整理、借り入れの組み方など、複数の要素が絡み合って初めて効果が出ます。そのため、不動産の節税は点で捉える単発の対策ではなく、設計(プランニング)として考えることが重要です。

不動産を活用した具体的な相続税対策の方法とは?

 

不動産を活用した相続税対策では、評価を下げることだけでなく「納税資金の確保」「遺産分割のしやすさ」まで含めて設計することが重要です。ここでは代表的な手法についてご紹介いたします。

 

賃貸物件への投資による節税

賃貸不動産は、土地が「貸家建付地」、建物が「貸家」として評価されるため、自己利用の不動産に比べて相続税評価額が下がる方向に働くことがあります。(土地の場合、自用地評価額から借地権割合×借家権割合を控除)加えて、家賃収入があれば、将来の相続税納税資金の原資として活用できる点もメリットです。ただし空室リスクや家賃下落、修繕費の増加によって収益性が損なわれると、本末転倒になりかねません。利回りだけを見るのではなく、需給(立地や賃貸需要、競合状況といった需給バランス)を最優先で判断することが重要です。

 

借入を利用した不動産購入

相続税は、「資産-負債」の実質的な純資産を意識して設計することが可能です。借り入れで不動産を購入すると、相続時点で借り入れ残高があれば負債として差し引かれ、課税対象の圧縮につながることがあります。とはいえ、借り入れはそれ自体がリスクでもあります。金利上昇や収支悪化に耐えられるか、返済計画が最悪のシナリオでも成立するかを事前に確認しておくことが重要です。

 

土地活用を活かした評価額の下げ方

土地は、更地のままよりも、一定の利用形態を取ることで相続税評価が変わる場合があります。たとえば、賃貸アパートの建築や、駐車場経営、事業用としての活用など、土地の使い方次第で評価額や特例適用の可能性が変わります。ただし「節税のためだけの建築」で収益性が低い場合、固定資産税や修繕費・空室リスクによって資金繰りが苦しくなりがちです。節税=利益ではない点をしっかりおさえましょう。

 

不動産小口化商品の活用

近年は、不動産を小口化した商品(複数人で保有する形態や受益権化されたもの)も選択肢のひとつとなっています。少額から始めやすく、相続時に分割しやすい点はメリットです。一方で、手数料体系や換金性、運営会社リスクなど、事前に確認すべき点も少なくありません。「相続対策」として活用する場合は、評価の考え方や相続時の承継手続き、売却の出口まで含めて把握しておくことが重要です。ただし、商品によっては相続税対策として税務当局に否認されるリスクもあるため、必ず税理士などの専門家に確認しましょう。

不動産を活用した相続税対策のメリットとデメリットとは?

 

不動産の相続税対策は効果が大きい一方で、判断を誤ると「節税どころか損失」に繋がる可能性があります。ここではメリットとデメリットを整理いたします。

 

メリット:大幅な節税効果と資産運用の可能性

不動産は、評価圧縮や各種特例の活用により相続税の負担を軽くできる可能性があります。さらに、賃貸であれば家賃収入が得られ、相続後の生活費や納税資金を支える資産にもなります。うまく設計できれば、節税と収益(キャッシュフロー)の両立を目指すことができます。

 

デメリット:リスクやコストの視点

一方で、不動産には空室や修繕、災害、家賃滞納、管理の手間、金利変動、固定資産税など、さまざまなリスクやコストが伴います。不動産は「持っているだけでお金が入る」資産ではなく、運用の良し悪しで結果が大きく分かれる点を理解しておく必要があります。

 

不動産購入時の注意点と長期的な運用リスク

相続対策目的の購入で陥りがちなのが、立地や需給より「節税額」を優先してしまうことです。将来売れない・貸せない物件を取得すると、評価が下がっても資産価値自体が低下し、相続人の負担になる可能性があります。購入時は、出口(売却・承継・建替え)まで見据えた長期戦略が欠かせません。

 

全体的な費用対効果を見極める方法

注目するべきなのは、「相続税がいくら下がるか」だけではありません。

 

  • 取得・保有・修繕・管理・売却までにかかる総コスト
  • 想定される家賃収入と空室リスク
  • 相続人が無理なく引き継げる運用負担か

これらを並べ、節税+収益-コスト=トータルで得かを判断することが重要です。税理士だけでなく、不動産実務に強い専門家の視点も大切となります。

不動産相続税対策を進める上での注意点とケースをご紹介

 

最後に、実務で起こりがちな論点と、成功・失敗の典型パターンをご紹介いたします。あらかじめ落とし穴を把握しておくことが、最大のリスクヘッジになります。

 

トラブルを避けるために押さえたいポイント

相続で揉めやすいのは「分けにくさ」と「評価に対する見解の差」です。不動産は、分割が難しく共有にすると意思決定が滞りがちになります。そのため、遺言の作成や家族会議、代償分割など受け取り方まで含めた事前設計が重要です。また、特例の要件確認や名義の整理、金の出どころ(贈与認定リスク)についても丁寧に整理しておく必要があります。

 

成功例:節税と安定収益を両立させたケース

たとえば、相続人居住実態や事業内容に合わせて、土地の特例適用を検討しつつ、賃貸需要の高い立地の物件を選び、管理体制まで整えたケースでは、評価圧縮に加え、家賃収入が納税資金や生活資金の支えになりました。このように「税務+運用+承継」をセットで設計できると成功確率は大きく高まります。

 

失敗例:不動産購入で評価額がほとんど下がらなかったケース

節税目的で、急いで物件を購入したものの、特例要件を満たせず、賃貸も想定どおりに回らなかった結果、修繕費が重なって資金繰りが悪化し、売却したくても買い手がつかないという失敗事例もみられます多くの場合、原因は要件確認不足と収益性・出口戦略の検討不足です。

 

専門家に相談する重要性と選び方

不動産相続は、「税務」「法律」「不動産実務」が交差する分野です。税理士はもちろん、相続に強い司法書士・弁護士、不動産の実需や賃貸に明るいプロも含めたチームでの対応が理想的です。選ぶ際は、実績や得意分野(賃貸・土地活用・法人化等)に加え、提案が一方向ではなく複数案を比較提案してくれるかを確認しましょう。

不動産は、相続税評価の仕組みや特例を活用できる点で大きな効果が期待できる一方、運用リスクとも常に隣り合わせです。大切なのは「節税できるか」だけでなく、「家族が引き継いでも困らないか」「資産として残るか」を同時に満たすこと。高翔の収益コラムとして、本記事が“相続と資産の設計”を考えるきっかけになれば幸いです。

高翔では住まいだけでなく、「暮らしの安心を支えるパートナー」として、あなたの未来を見据えた資産形成を応援しています。芦屋・阪神間で、不動産の相続対策でお悩みがありましたら、お気軽に高翔までお問い合わせください。