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不動産投資
2026.10,22

収益物件を買い替えると税金はどうなる? 特例の仕組みや適用要件

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収益物件を売却して別の物件へ買い替えるとき、「売却益にかかる税金を少しでも抑えられないだろうか」と考える方は多いのではないでしょうか。事業用資産を買い替える場合、一定の要件を満たせば、譲渡益の一部にかかる課税を先送りできる特例が用意されています。ただし、収益物件であれば何でも対象になるわけではありません。譲渡資産と買換資産の組み合わせ、取得時期などに細かな要件が定められています。
この記事では、収益物件を買い替える際に使える特例の仕組みと適用要件、利用時の注意点について解説します。
※この記事では、個人が所有する収益物件の買い替えを前提に解説します。法人の場合は、税率や手続きなどが異なります。

この記事を読むとわかること

  • 事業用資産の買換え特例の基本的な仕組み
    収益物件で特例を利用するための主な要件
    特例を利用した場合の譲渡所得と税金の計算イメージ
    期限・手続きや買換資産選びで注意したいポイント

収益物件の買い替えで利用できる「事業用資産の買換え特例」とは?

収益物件の買い替えで利用できる「事業用資産の買換え特例」とは?

 

収益物件を売って利益が出ると、その譲渡益には所得税と住民税が課されます。長期譲渡所得(売却した年の1月1日時点での所有期間が5年超)に当たる場合の税率は、復興特別所得税を含めて20.315%です。

条件を満たして買い替えるなら、「事業用資産の買換え特例」(以下、買換え特例)が使えるかもしれません。制度のあらましから確認していきましょう。

出典:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」

事業用資産の買換え特例の仕組み

事業用の土地・建物などの売却に伴い、所定の期間内に別の事業用資産を取得し、一定の要件を満たす場合に利用できる制度を買換え特例と言います。

この特例を使うと、譲渡益のうち一部だけが課税対象となり、残りへの課税は将来へ繰り延べられます。売却で得た資金の多くを次の物件購入に充てられるため、資産の組み替えに役立ちます。

ここでいう「事業」には製造業や小売業のほか、マンションオーナーなど不動産の貸付も事業に含まれるため、一定の要件を満たせば利用できる可能性があります。

出典:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」

税金が非課税になる制度ではない

ただし、買換え特例は譲渡益が非課税になる制度ではありません。課税されるタイミングが先送りされるだけであり、納税が将来に回ると理解しておきましょう。

また、この特例を使うと、買換資産の取得費が実際の購入額にならないため、売却した物件の取得費を一定の計算で引き継いだ金額となる点にも注意が必要です。

したがって、のちにその買換資産を売るときの譲渡所得は、低く抑えられた引継ぎ後の取得費を前提に算出します。繰り延べられた譲渡益は、原則として将来の売却時の譲渡所得に反映されます。

不動産投資と税金の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。

不動産投資は節税になる?仕組み・条件・落とし穴まで税金対策をわかりやすく解説

収益物件で買換え特例を利用するための主な要件

収益物件で買換え特例を利用するための主な要件

 

収益物件を売って別の物件を購入しても、自動的に買換え特例が適用されるとは限りません。売却する側を譲渡資産、買い替える側を買換資産と呼び、その組み合わせや取得時期など、すべての適用要件を満たす必要があります。

主な要件を3つに分けて確認していきます。

譲渡資産と買換資産が事業用であること

大前提として、売却する物件も買い替える物件も「事業用」である必要があります。

不動産投資においては、相当の対価を受け取りながら継続して貸付けを行っている場合、たとえ事業的規模に満たない場合でも、「事業に準ずるもの」として扱われる場合があります。受け取っている対価が相当かどうかは、減価償却費や固定資産税といった経費を賄ったうえで、相当の利益が生じているかどうかで見極めます。

これに対し、空き家や空き地、特別な施設のない駐車場などは事業用資産に該当しません。特例の適用を目的とした一時的な貸出しも対象外です。「収益物件」という呼び名だけで判断せず、実際の貸付けの状況を確認しましょう。

出典:国税庁「No.3402 事業用の資産の範囲」

譲渡資産と買換資産の組み合わせなどの要件を満たすこと

譲渡資産と買換資産の組み合わせは法律で区分が定められており、現行制度では4つの区分があります。たとえば、航空機騒音障害区域からの移転や、既成市街地等の区域内で市街地再開発事業に伴って行う買換えなどです。

収益物件のオーナーに関係が深いのは、所有期間10年超の国内の土地・建物を売り、国内の土地・建物などへ買い替える組み合わせです。主な要件は次の表のとおりです。

項目 主な要件
譲渡資産 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超える国内の土地・建物など
買換資産(建物) 事務所・店舗・住宅などの「特定施設」に使う建物
買換資産(土地) 特定施設の敷地などに使う、面積300㎡以上の土地
土地の面積制限 売却した土地の面積の5倍まで(超える部分は対象外)
適用期限 2029年(令和11年)3月31日までの譲渡

特に、買換資産の土地には300㎡以上という面積要件がある点に注意が必要です。取得する土地が300㎡に満たない場合、その土地部分は特例の対象外となります。区分マンションのように敷地を共有する物件を検討するときは、面積要件を満たすか事前に確かめておきましょう。

適用できるかどうかは、土地・建物の所在地や用途、所有期間によって変わります。物件ごとに当てはまる区分を確かめ、最新の要件と照らし合わせることが大切です。

出典:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」

買換資産を一定期間内に取得して事業に使用すること

買換資産は、原則として、物件を売却した年の前年・同年・翌年のいずれかに取得しなければなりません。

さらに、買換資産は取得日から1年以内に事業で使い始める必要があります。収益物件なら、1年以内に賃貸を始めるイメージです。取得から1年以内に事業で使わなくなった場合も、原則として特例は適用されません。

前年に取得する場合(先行取得)や売却と同じ年に取得する場合は、所定の届出書を期限までに提出しなければなりません。翌年に取得する予定のときは、確定申告書に取得予定の明細書を添付します。

【初めてでも安心!】収益物件購入の流れと失敗しないためのチェックリスト

買換え特例を利用すると税金はどうなる?

買換え特例を利用すると税金はどうなる?

 

特例を使えば、売却時の譲渡益のすべてに通常どおり課税されることはありません。とはいえ、課税がなくなるわけでもないため、計算の仕組みを理解しておくことが重要です。

譲渡益の一部に対する課税を将来へ繰り延べられる

特例を使う場合、売却価格(譲渡価額)の全額ではなく、その一部の割合だけを収入金額として譲渡所得を算出します。この割合は「課税割合」と呼ばれ、原則は20%です。買換資産の取得価額が譲渡価額以上で、課税割合が20%の場合、譲渡益の80%に対する課税を将来へ繰り延べられます。

課税割合は、売却する物件と買い替える物件の所在地によって異なります。区分の基準となる「集中地域」とは、地域再生法で定められた区域です。東京都特別区を含む首都圏の既成市街地・近郊整備地帯のほか、近畿圏の既成都市区域、名古屋市の特定の区域が該当します。関西圏の場合、大阪市のほか、京都市・堺市・神戸市・尼崎市・西宮市・芦屋市などの特定の区域が「集中地域」に含まれます。10年超保有の土地・建物を関西圏で買い替える場合の主な区分は、以下のとおりです。

譲渡資産の所在地 → 買換資産の所在地 課税割合
下記以外(原則)※集中地域内での買い替え(例:大阪市→神戸市の特定の区域)を含む 20%
集中地域以外 → 集中地域(例:兵庫県姫路市→大阪市) 25%

たとえば、集中地域以外にある物件を売却して大阪市内の物件へ買い替えると、課税割合は25%です。一方、大阪市内の物件を売却して神戸市の特定の区域にある物件へ買い替えるなど、集中地域内での買い替えは原則どおり20%となります。売却物件と買換資産の所在地がどの区域にあたるかは、事前に確認しておきましょう。

出典:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」

売却額と買換資産の取得額によって計算方法が異なる

譲渡所得の計算は、買換資産の取得価額が譲渡価額以上か、それを下回るかによって変わります。課税割合が20%の場合の計算式は次のとおりです。

ケース 収入金額 必要経費
取得価額が譲渡価額以上 譲渡価額×20% (取得費+譲渡費用)×20%
取得価額が譲渡価額未満 (譲渡価額−取得価額)+取得価額×20% (取得費+譲渡費用)×収入金額÷譲渡価額

具体例で見てみましょう。15年間保有した一棟アパートを1億円で売却し、譲渡所得の計算に使う取得費が4,000万円(土地の取得費と、減価償却費を差し引いた後の建物の取得費の合計)、仲介手数料などの譲渡費用が300万円だったケースを想定します。

項目 特例なし 特例あり(1億2,000万円で買い替え) 特例あり(6,000万円で買い替え)
課税される譲渡所得 5,700万円 1,140万円 2,964万円
税額(20.315%) 約1,158万円 約232万円 約602万円

※筆者試算。課税割合20%、長期譲渡所得の税率20.315%で計算

売却額以上の物件へ買い替えた場合、今回の税額は約1,158万円から約232万円まで下がる計算です。反対に6,000万円の物件へ買い替えると、売却額との差額4,000万円がそのまま収入金額に加算されます。買換資産の価格が低いほど、繰り延べの効果は小さくなるため注意が必要です。

出典:国税庁「No.3414 売った金額より少ない金額で事業用の資産を買い換えたとき」

買換資産の取得費にも影響する

特例を適用すると、買換資産の取得費は実際の購入額ではなく、売却した物件の取得費を引き継いだ金額となります。先ほどの1億2,000万円で買い替えた例では、引き継ぐ取得価額を次のように求めます。

  • (取得費4,000万円+譲渡費用300万円)×80%=3,440万円
  • 譲渡価額1億円×20%=2,000万円
  • 買換資産の取得価額1億2,000万円−譲渡価額1億円=2,000万円
  • 合計:7,440万円

実際の購入額が1億2,000万円でも、税務上の取得価額は7,440万円となります。この金額は土地と建物の購入額の比率で按分し、建物の減価償却費も按分後の金額を基に計算します。

その結果、毎年の減価償却費が小さくなり、家賃収入にかかる所得税・住民税が増えることもあります。将来の売却時にも低い取得費で譲渡益を計算するため、税負担が重くなりやすい点には注意が必要です。売却時点の税負担だけで判断せず、保有中の手残りも含めて比較しましょう。

出典:国税庁「No.3426 事業用資産の買換えの特例を受けて買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算」

不動産投資のキャッシュフロー計算の基本|NOI・手残りの見方とは

収益物件の買換え特例を利用するときの注意点

収益物件の買換え特例を利用するときの注意点

 

買換え特例には、取得期限や申告手続きのルールがあるほか、税制上の特例との関係にも気を配る必要があります。利用を検討する際に確認したいポイントを整理しましょう。

買い替えの期限と手続きを確認する

買換資産を取得する時期によって、必要な手続きは変わります。2024年4月1日以降は同じ年に売却と取得を行う場合も、届出書の提出が必要になりました。期限内に提出しないと特例を受けられないため、注意しましょう。

取得の時期 必要な手続き 期限
売却の前年 「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」の提出 取得した年の翌年3月15日
売却と同じ年 「特定の事業用資産の買換えの特例の適用に関する届出書」の提出 売却日か取得日の早い日を含む三月期間(※)の末日の翌日から2か月以内
売却の翌年(予定) 確定申告書に「買換(代替)資産の明細書」を添付 確定申告の期限

※三月期間とは、1〜3月、4〜6月、7〜9月、10〜12月の各期間のことです。たとえば5月10日に売却し、同じ年の9月に買換資産を取得する場合、届出書の提出期限は8月末日です。

適用を受けるためには、確定申告書に譲渡所得の内訳書や買換資産の登記事項証明書などを添付して申告します。もし期限までに買換資産を取得できなかったり、取得から1年以内に事業の用に供さなかったりしたときは、原則として4か月以内に修正申告を行い、差額の税金を納付します。

出典:国税庁「No.3405 事業用の資産を買い換えたときの特例」

ほかの税制上の特例との併用可否を確認する

買換え特例の対象となった資産には、ほかの特例を重ねられないものがあります。減価償却資産の特別償却や、優良住宅地の造成等のための土地等の譲渡に関する特例などが該当します。

売却時に使える制度は、買換え特例だけではありません。同じ種類・用途の不動産どうしを交換する場合は「固定資産の交換の特例」を使えるケースもあります。逆に、あえて特例を使わず、買換資産の購入額をそのまま取得費として減価償却する選択肢も考えられるでしょう。

有利になる方法は、所得の状況や保有予定期間で異なります。個別の適用可否は、税理士などの専門家へ確認しましょう。

出典:国税庁「No.3502 土地建物の交換をしたときの特例」

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税負担だけで買換資産を選ばない

特例を受けることを優先しすぎて収益性の低い物件を選ぶのは、本末転倒です。取得期限が迫るなかで、相場より割高な物件を買ってしまうおそれもあります。

買換資産を選ぶときは、立地や賃貸需要、利回り、将来の修繕費などを総合的に確認します。日本不動産研究所の調査(2026年4月現在)によると、賃貸住宅一棟(ワンルームタイプ)の期待利回りは大阪4.2%、京都4.6%、神戸4.7%です。同じ関西圏でも都市ごとに水準が異なります。なお、この数値は投資家への調査による期待利回りであり、個別物件の表面利回りとは異なります。比較する際は、利回りの定義や物件の条件をそろえて判断しましょう。

賃貸需要の弱いエリアを選ぶと、空室が続いて収支が悪化するおそれもあります。兵庫県の調査結果では、2023年時点の県内の空き家率は13.8%ですが、地域別では10.5%(阪神北地域)から23.8%(淡路地域)まで差があります。空き家率は地域の住宅事情を把握する参考になりますが、賃貸物件の空室率とは異なるため、周辺の募集状況なども確認しましょう。目先の税負担だけでなく、保有期間や将来の売却まで見据えた収支を考えましょう。

出典:一般財団法人日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)」

出典:兵庫県「令和5(2023)年住宅・土地統計調査〜兵庫県調査結果の概要〜」

【高利回り物件の罠?】収益物件の利回り計算の基本と注意点

買換え特例の仕組みを理解して収益物件の買い替えを検討しよう

買換え特例の仕組みを理解して収益物件の買い替えを検討しよう

 

収益物件の買い替えでは、要件を満たせば事業用資産の買換え特例を利用できる場合があります。利用するには、資産の組み合わせや取得時期、事業への使用、届出など、複数の要件をクリアしなければなりません。また、取得費を引き継ぐため、保有中の減価償却費や将来の売却時の税負担にも影響します。

大切なのは、特例の利用そのものを目的に買い替えを決めないことです。物件の収益性や資金計画、将来の売却まで見据えて、税理士や地域の市場動向に詳しい不動産会社に相談しながら進めることも欠かせません。

芦屋市・西宮市・神戸市近辺で収益物件をお探しの方は、ぜひ高翔にご相談ください。